斑尾高原での危険


■山で被害を受けやすい生物とその対処法
スズメバチ
スズメバチ(雀蜂、胡蜂)は、ハチ目スズメバチ科に属する昆虫のうち、スズメバチ亜科(Vespinae)に属するものの総称である。ハチの中でも比較的大型の種が多く、性格は概ね獰猛。1匹の女王蜂を中心とした大きな社会を形成し、その防衛のために大型動物をも襲撃する。4属67種が知られ、日本にはスズメバチ属7種、クロスズメバチ属5種、ホオナガスズメバチ属4種の合計3属16種が生息する。日本で最も危険な野生動物であり、熊害や毒蛇の咬害よりもスズメバチによる刺害の死亡例の方が遥かに多い。スズメバチは狩りバチの仲間から進化したと見られており、ドロバチやアシナガバチとともにスズメバチ科に属する。そのスズメバチ科はアリ科、ミツバチ科と同じハチ目に含まれている。
スズメバチはミツバチと並び、最も社会性を発達させたハチであり、数万もの育室を有する大きな巣を作る種もある。アシナガバチ等と違い、雄バチは全く働かず、女王蜂が健在の間は他の蜂は一切産卵しない。女王蜂を失った集団では、働き蜂による産卵も行われるが、生まれるハチは全て雄であり、巣は遠からず廃絶する。
「スズメバチ」の名は、その大きさが「雀ほどもある」または「巣の模様が雀の模様に似ている」ことに由来する。
性別や女王蜂、働き蜂の決定は基本的にはミツバチと同じようなものである。ハチ目の共通の性質として未受精卵はオス蜂に、受精卵はメス蜂になる。したがって、女王蜂が精嚢から精子を取り出す、もしくは取り出さないによって性別を決定している。働きバチはすべて雌である。
また、女王蜂になる卵と働き蜂になる卵は同じで、幼虫時代に食べさせられた餌によって地位が決定される。
女王蜂は10-11月頃に羽化すると、終齢幼虫から栄養液を十分摂取した後に巣を離れる。雄蜂と交尾した後は一切摂食せず、朽木などに越冬室を掘り、その中で冬眠に入る。
翌年の春、冬眠から覚めた女王蜂は営巣を開始する。巣材収集や幼虫の餌の狩猟は主に働き蜂の役割であるが、働き蜂が誕生するまでは女王蜂が単独で行い、また働き蜂誕生後もある程度の規模に巣が大きくなるまでは、働き蜂らと共に巣の維持や狩猟をこなす。
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働き蜂は7月頃から羽化を始め、9月から10月にかけて集団の個体数が最大になる。種や気候によっても異なるが、例えばオオスズメバチでは一つの巣で数百匹規模にまで増える。働き蜂と雄蜂は基本的には越冬せず、冬季には死滅する。例外としてネジレバネの寄生した働き蜂は、労務に加担せず、越冬も行う。
雄蜂は女王蜂より少し早い9-11月頃に生まれる。雄蜂は子孫を残すためだけの存在であり、全く働かない。ただし、同じスズメバチ科のアシナガバチの仲間では幼虫に餌を運ぶ等の行動が痕跡的にだが見られることがある。
繁殖期になると若い女王蜂が巣から飛び立ち、雄蜂も交尾のために一斉にその後を追う。大半は天敵に捕食されるか力尽き、交尾に成功するのはこの中のごく一部である。無事に交尾に成功したオスは間もなく死亡し短い生涯を終える。
一度刺されただけでも、何か太いものが突き刺さったような強烈な激痛を伴う。刺されたら、さらに集団で襲われることがあるので、スズメバチの攻撃行動をより刺激する危険のある大きな身振りを控えつつ、まずは速やかにその場から離れる。そして、冷やしながらできるだけ早く病院に行くべきである。
毒液が目にはいると場合によっては角膜の潰瘍を引き起こし失明することがあるので、すぐに水で目をすすぎ病院で治療を受ける必要がある。
応急処置としては、傷口を流水ですすぎ、傷口をつまんだり吸引器を用いる方法で毒液を体内から外に出す。この際、口で毒液を吸い出してはならない(口に傷があった場合、そこから毒が染み込む可能性があるため)。スズメバチに限った話ではなくウミヘビなどにも言えることだが、毒を不活化させるためタンニンを含むもので傷口を洗うことは非常に効果的である。この目的にはタンニン軟膏を使用するのが最良ではあるが、身近にあるお茶(は特に番茶)にもタンニンが多く含まれており代用することができる。
抗ヒスタミン剤やステロイド系抗炎症薬を含む軟膏があれば、それを塗るのもよい。過去に刺されたことがある場合は、たとえ前回大事に至らなくても免疫系の記憶システムによりアナフィラキシーショックを起こす可能性が高くなり、場合によっては死に至ることもあるので非常に危険である。
なお、俗に言われる「アンモニアが効く」というのは迷信であり、尿などつけない方がよい。蜂の毒にはアンモニアは無効であり、さらにそのアンモニア自体、尿に含まれない
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ニホンマムシ(マムシ亜科、マムシ属)
全長45-60cm。体形は太短い。体色は淡褐色で、20対前後の中央に黒い斑点のある俗に銭型とも呼ばれる楕円形の斑紋が入る。胴体中央部の斜めに列になった背面の鱗の数(体列鱗数)は21列。尾は短い。
頭は三角形で、眼線がかなりはっきりしている。舌は暗褐色。
幼蛇の場合は尾の先端が黄色になっている。
平地から山地の森林、藪に住む。水場周辺に多く出現し、渓流周辺で見掛けることが多い。 時々周辺の田畑にも出没する。夜行性だが、冬眠直前や直後の個体、妊娠中のメスは日光浴のため昼間に活動することもある。危険を感じると尾を寝かせた状態で細かく振るわせ、地面などを叩いて音を出して威嚇するがこれは、他のヘビにも見られる行動である。
食性は動物食で、小型哺乳類、小型爬虫類、両生類等を食べる。
繁殖形態は卵胎生で、夏に交尾し翌年の8-10月に1回に5-15頭の幼蛇を2-3年に1度産む。
斑尾高原にも生息するが樽本地区には多く生息する。
咬傷と処置
咬傷による死亡率は高くないが、年間約3,000人が被害を受け、死者は10名程度とされる(日本で最も多くの被害を出しているヘビである)。 これは毒の注入に失敗したり小型であるため毒量が少ないことや、神経毒が少ないためである。しかし、量は少ないが毒性はハブよりもはるかに強いので、充分な注意が必要である。咬まれた時間や状況が説明出来るように覚えておく。 牙跡は通常2ヶ所(但し、1〜4ヶ所の事もある)で、現場で可能な処置は、咬傷部より心臓側で軽く緊縛(緊縛も後述の乱切や吸引同様、問題視されつつあり、するのであれば軽く緊縛するのが無難である)。安静にする。身体を激しく動かすと体液の循環が促進され、毒のまわりが早くなる。 口で毒を吸い出すと言われているが、『素人による切開・毒素の吸引は行わない』こと。 速やかに処置可能な医療機関でマムシ抗毒素血清投与などの治療を受ける。6時間以内の血清投与が推奨されており、少なくとも24時間は経過観察が必要。血清投与に際しては、アナフィラキシー・ショック(薬物過敏症等)に十分注意し投与する。
ヤマカガシ(ナミヘビ科)
体長:0.6〜1.2m(最大約1.6m)
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山沿いの田んぼや川沿いに生息している普通のヘビです。カエルやオタマジャクシ、魚などを好んで食べているようです。秋に交尾をし、翌年の初夏に産卵をすることから冬眠明けに体内で受精すると考えられている。
褐色の地色に黒い斑紋と赤、黄、深緑が混ざるカラフルな体色、幼蛇はさらに赤や黄色が目立つ。
ただし、地域によって体色の変異が多く黒変種も知られている。
ヤマカガシは1972年に毒ヘビであることが判明。ヤマカガシは特殊な毒蛇で、キバ(奥歯)から毒を出すほかに、首のあたりにも毒腺があり、キバの毒とは違う毒を出し、これが目に入ると失明をするおそれもある。
首の毒は明らかに身を守るための毒なので、つまり唯一日本産のヘビの中で身を守るためだけの毒を持つヘビなのかも知れない。
応急処置の方法
虫刺され
@ よく傷口を洗う
A 薬をたっぷりと塗る
B 蜂の場合は針を取り、できるだけ薬の上を冷やす
C 蜂の場合は医者の診断を受けるほうが望ましい
ヘビ(蝮・ヤマガカシ)にかまれる
@ なるべく動かさない (毒蛇の場合は10分後には腫れてくる)
A 傷口より上部を縛り、ナイフ等で1cm程度切り毒を出す
B 医者に連れて行き、血清を打ってもらう
ツタウルシとヤマウルシ
ヤマウルシは日本全国に分布する落葉の小高木。南千島、朝鮮、中国にも分布し、よく似たヤマハゼに比べ、北方系である。樹形はあまり枝分かれせず、幹や枝の先端にまとまって葉を広げる。
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ヤマウルシの和名は、山に生育する漆の取れる木であるとの意味で、樹液から漆液を取ることが出来るが、取れる量は多くはないとのことである。樹皮を傷付けると最初は白色の乳液が出るが、やがてこの樹液は黒紫色に変色する。
ヤマウルシは樹液に触れるとかぶれる。春の新芽が出る頃はかぶれ易いが、秋の紅葉の頃はあまりかぶれない
本種をはじめ、近縁種はアレルギー性接触性皮膚炎(いわゆる「ウルシかぶれ」)を起こしやすいことで有名である。これはウルシオールという物質によるものである。人によっては、ウルシに触れなくとも、近くを通っただけでかぶれを起こすといわれている。また、山火事などでウルシなどの木が燃えた場合、その煙を吸い込むと気管支や肺内部がかぶれて呼吸困難となり非常に危険である。
ウルシの場合、アレルギー性接触皮膚炎といわれるものである。
アレルギーというのは、体に入ってきた異物を排除する「免疫」が体に悪影響をもたらす反応の総称で、おなじみ花粉症などもアレルギーである。つまり、花粉は確かに異物ではあるが、普通は特に排除する必要もなく無視される。これを排除しようと体が過剰反応をし、その際不快な症状が出るというのがアレルギーである。
かぶれの原因物質は、ウルシオール(Urushiol) 主にウルシ属の植物体を傷つけた時に出る乳液に入っている。
ウルシオ−ルなどの毒性分に皮膚が触れると、かゆみをともなう炎症や水泡性皮膚炎を生じ、のちに激痛を感じる場合もある。
かぶれてしまった場合の応急処置は、かぶれたところをよく水で洗い流したうえ、抗ヒスタミン剤を含有したステロイド軟膏(副腎皮質ホルモン軟膏)を塗り、かぶれた部分を氷や濡れタオルなどで冷やすと効果的です。また樹液や患部を触れた手でほかの場所に触れるとかぶれが広がるので注意しましょう。痒くてもかかずに、特に目はさわらないこと。症状が長引くようであれば、何でかぶれたかを確認したうえ、皮膚科で診察を受けてください
毒毛虫
刺す毛虫:チャドクガ、ドクガ、イラガ、クロシタアオイラガ、マツカレハ
刺さない毛虫:マイマイガ、アメリカシロヒトリ、クスサン、オビカレハ
ドクガ科のなかまは幼虫だけでなく成虫も毒毛を持つので要注意。また毛虫の種類によって毒毛や毒の成分が違うので、症状もいろいろだが、おおむね皮膚炎を起こして赤く腫れ、かゆみが生じる。場合によってはアレルギー症状が出て全身症状になることもある。応急処置は手で触れず、水で洗い流したのち、抗ヒスタミン剤を含有したステロイド軟膏を塗る。触ると毒毛を押し込んでしまうので、粘着テープなどで毛を除去するとよい。ドクガ(キドクガ、モンシロドクガ)は、成虫の鱗粉に毒毛が付いているので注意。
毒を持つ毛虫は、見た目の毒々しさだけで判断せず、特長を覚えておく必要がある。幼虫が毒毛や毒棘を持つが、ガの仲間はマツカレハ、タケカレハ、クヌギカレハ、イラガ、アオイラガ、クロシタアオイラガなど要注意である。
またマメハンミョウ(ツチハンミョウ科の甲虫で、頭がオレンジ色、胴体上に付く2枚の羽は黒いが縦に3本の白線が入る)には、「カンタリジン」という強い毒性分を持ち皮膚炎を起こしす。飲み込んだ場合の死亡例もあり、生薬にも使われている。ヒキガエルも皮膚から毒性分を分泌しているので、触った手で目や粘膜を触れないように注意が必要である。
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