斑尾高原に見られる両生類、昆虫

■両生類
モリアオガエル (アオガエル科・アオガエル属)
日本の固有種で本州と佐渡島に分布。体長はオスで4〜6cm、メスで6〜8cm位とメスの方が大きい。
指先には丸い吸盤があり、木の上での生活に適応。
背中側の地色は緑、体表にはツヤがなく、目の虹彩が赤褐色なのも特徴。成体は、他のカエルと同様に肉食性で、昆虫類やクモ類などを捕食する。いっぽう、天敵はヤマカガシ、イタチ、アナグマ、タヌキなどである。
非繁殖期は主に森林に生息し、繁殖期の4月から7月にかけては生息地付近の湖沼に集まる。
まずオスが産卵場所に集まり、なきながらメスを待つ。メスが産卵場所にやってくるとオスが背がみつき、産卵行動が始まるが、卵塊の形成がすすむにつれて1匹のメスに数匹のオスが群がる場合が多い。
産卵・受精が行われると同時に、粘液が分泌されるが、この粘液を集まったオスメスが足でかき回し、受精卵を含んだ白い泡の塊を作る。直径10〜15cmほどの泡の塊の中には黄白色の卵が300〜800個ほど産み付けられる。泡の中では複数のオスの精子がメスが産んだ未受精卵をめぐって激しい競争を繰り広げると考えられており、モリアオガエルの精巣の大きさが際立って大きいことの原因と推測されている。
泡は表面が乾燥して紙のようなシートとなって黄白色の卵塊となり、ふ化するまで卵を守る役割を果たす。
1週間から2週間ほど経って、卵がふ化する。ふ化したオタマジャクシは泡の塊の中で雨を待ち、雨で溶け崩れる泡の塊とともに下の水面へ次々と落下する。ふ化したばかりのオタマジャクシは腹部に卵黄を抱えているため、腹が黄色をしているが、やがて卵黄が吸収され、全身が灰褐色となる。オタマジャクシは藻類や動物の死骸などを小さな歯で削り取って食べる。
オタマジャクシは1ヶ月ほどかけて成長するが、この間の天敵はヤゴ、ゲンゴロウ、タイコウチ、イモリなど。イモリは幼生が卵巣から落下するときに、その真下で待ち構えて、落ちて
117
くる幼生をパクパク食べる。前後の足が生えてカエルの姿になった幼体は上陸し、しばらくは水辺で生活するが、やがて森林で生活を始める。
その保護について、モリアオガエルは各地で生息数を減らしている。主な理由は生息地の森林などに人の手が入り、環境が変化したことによる。産卵のためには水面上に木の枝がせり出すような湖沼が必要だが、そのような場所の減少も原因のひとつである。
福島県双葉郡川内村平伏沼(へぶすぬま)の繁殖地、また岩手県八幡平市の大揚沼モリアオガエルおよびその繁殖地が国指定の天然記念物と指定されている他、本種が生息する都道府県・市町村などでは、自治体指定の天然記念物とされていることが多い。
クロサンショウウオ 黒山椒魚(サンショウウオ科・サンショウウオ属)
全長12-20cm。体色は暗褐色。胴体の左右側面にそれぞれ入る皺(肋条)は11本。
尾は長く縦に平たく、四肢は長い。
関東地方北部、東北地方(岩手・福島両県の太平洋側を除く)、中部地方(日本海側) に生息する。
山麓から2000m級の高山や、分布域の北部では沿岸から見られ、南部では1000m以上の山地に多く見られる。
同じ両生類であるカエル同様に、クロサンショウウオは幼生時代を水中で過ごし、成長すると上陸して、森林・雑木林の倒木の下や土の中などで生活するようになる。
群れを作ることはせず単独で隠れ棲んでいますが、条件の良い隠れ家には、その狭い内部に複数が潜んでいることもあるようだ。
よく、サンショウウオはきれいな清流にしか棲んでいないと誤解している人がいるが、実際には陸上で生活している種類が多く、成体が水の中に入るのは産卵の時だけなのが普通である。
夜行性で昼間は石や落ち葉の下に隠れて休む。天敵としては肉食性の鳥類や哺乳類、水生昆虫、アメリカザリガニ等が挙げられる。
食性は肉食性で昆虫類や節足動物、ミミズ等を食べる。
繁殖形態は卵生で、2〜7月に池沼、水溜り、湿地等に、透明な層と白い層に包まれ、アケビの果実のような形で20〜80個の卵を収めた卵のうを1対産む。この際、オスはメスに抱きつい
118
119
て引き抜くようにする助産行動をとる。これは、クロサンショウウオは体外受精のため、メスが産んだ卵のうにいち早く自分の精子をかけるためだと考えられている。
ちなみに、ほとんどの有尾類は体内受精であるのに対して、なぜか日本のサンショウウオはすべてが体外受精という珍しい特徴を持っている。
卵のうの先端は柄のようになりこの部分を水草や枝等に付着させる。サンショウウオの卵の中では唯一白濁しており、他種のものと容易に区別できる。
幼生から成体へ
生まれてくる幼生は、外鰓(がいさい)と呼ばれるふさふさしたエラのあるかわいらしい姿をしている。
10日もすれば前足が生え始め、さらに1週間ほどすると後足も生えてきて、孵化から2ヶ月ほど経つと、外鰓が徐々に小さくなり、変態の時期をむかえる。(変態とは、オタマジャクシからカエルになるように、幼生が成体の姿に変化すること)
■昆虫類
ミヤマクワガタ(ミヤマクワガタ科・ミヤマクワガタ属)
日本では「ノコギリクワガタ」と並び大型でポピュラーな種類である。
深い山(深山)がその和名として付けられた。成虫は地域により昼活動するものと夜活動するものがあるようで、標高の高い場所では気温の上がる昼に活動するようだ。
大きさは最大で78,6mmが記録されている。成虫では越冬しない短命タイプのクワガタである。アゴは大きいが挟む力は意外と弱く、戦闘的に威嚇をするが、異種のクワガタと戦った場合は負ける事が多いようだ。
体色はオス、メス共に黒色から茶色に変化し、特にオスは多種に比べて黄茶色っぽく、頭部に冠状の突起「(頭部)耳状突起」を有するのが最大の特徴である。日本では北海道から九州まで広く生息しており、クヌギ、コナラなどの樹木にやって来くる。
斑尾高原でもミズナラなどの樹液にやって来る。時には夜、高原内の街灯に飛来しているのを見かける場合がある。
このクワガタは、基本型、エゾ型、フジ型の3型に分かれており、標高と緯度によって棲み分けをしている。標高1000m前後の山地(斑尾高原)では、「エゾ型」と考えて良い。
また、亜種として伊豆諸島に生息する「イズミヤマクワガタ」や中国北部や朝鮮半島に生息する「チョウセンミヤマクワガタ」、台湾に生息する「タカサゴミヤマクワガタ」中国に生息する「シナミヤマクワガタ」などがある。
ギフチョウ、ヒメギフチョウ
220余の種類が棲んでいる、日本の蝶の中でも、この蝶はゼフィルス(シジミチョウの仲間)と並んでもっとも人気のある蝶である。
120
ギフチョウ属の蝶は早春まだ残雪が残っている頃人里近くの雑木林から飛び出す小型で可憐な美しいアゲハチョウ科の蝶である。
春の女神(スプリングエフェメラル・春のはかない命)と言われており、ギフチョウは、レッドデータブック絶滅危惧U類に指定されている。
ギフチョウは、日本の固有種で、本州の秋田県南部から山口県中部にいたる26都府県(東京都・和歌山県では絶滅)に分布する。大きさは、ヒメギフチョウよりやや大きめである。
ギフチョウの幼虫は、カンアオイの葉しか食べない。
ヒメギフチョウは、大きさは両翼を広げても5〜6cmくらいの小型のアゲハで、分布は日本の限られた地方のみ。主に北海道と東北、それに中部日本地方だけに生息している。
ヒメギフチョウの幼虫は、ウスバサイシンの葉しか食べない。
早春に羽化した成虫は、このウスバサイシンの葉裏に産卵する。緑白色で光沢のある小さな卵を10個〜15個くらい一箇所にまとめて生む。
日本ではギフチョウとヒメギフチョウの分布が明確に分かれていることが知られており、この2種の分布境界線をリュードルフィアライン(ギフチョウ属線)と呼ぶ。ギフチョウとヒメギフチョウの分布域は一部で混生しているほかは、「すみ分け」の現象がみられる。
この境界線であるルードルフィア・ラインは、冷温帯と暖温帯の境界線ともほぼ一致している。
当斑尾高原は、その境界線に当たりギフチョウとヒメギフチョウの2種が生息すると見られており、蝶類学的にも大変貴重な地域の1つであり、地域として保護をしていかなくてはならない蝶類である。
ギフチョウ、ヒメギフチョウの違いは本当によく似ているが幼虫の形態が違う、食草が違う、生態も違う等で別種となっている。見分け方は以下
項 目
ギフチョウ
ヒメギフチョウ
黄条紋
一番上が内側にずれて入り込む
連続的につながる
弦月紋
橙色
黄色
外 縁
はねの外縁が直線的
はねの外縁が丸い
121
尾状突起
先が太い
先が細く、尖っている
黒条紋
幅が広い
幅が狭い
ギフチョウは孵化するとカタクリ、ショウジョバカマ、スミレ、桜等の密をすう。天敵としてダニ、くも、アリがあげられる。
卵―幼虫(4回脱皮)―終齢幼虫(枯れ葉の下等に潜り帯糸を作り固定する)前蛹40〜60日間―蛹化―翌春ふ化―吸密―交尾−産卵
アサギマダラ 浅黄斑(アゲハチョウ上科・タテハチョウ科・アサギマダラ属)
アサギマダラは、マダラチョウ科に属する前翅長40〜60oの可憐な蝶である。春の北上、秋の南下を繰り返す「渡り」をするチョウとしても知られている。夏には標高1,000m付近の高地帯をさまようことが分かってきたが、北上から「さまよい」、そして南下の行動を解発する刺激要因がまだ分かっていない。2,000年に台湾台北市北部の陽明山でマークされた2個体が、鹿児島県と滋賀県でそれぞれ再捕獲され、このチョウの移動範囲が日本周辺の国外に及ぶことが明らかになった。しかしその移動の範囲の全貌はまだ明確でなく、謎のチョウと言える。他のマダラチョウと同様に擬態現象の主役であり、食草中のアルカロイドの防御物資への転用のメカニズムが生科学分野で注目されている。オスは吸密植物からピロリチディンアルカロイドを摂取しないと成熟出来ず、ヒヨドリバナ属などの花に強く誘引される。各地の調査結果では、性比に著しい偏りがあり、行動学における配偶戦略の材料としても興味深い。
アサギマダラはアルカロイドという有毒成分を含むガガイモ科の植物(キジョラン、カモメヅル、イケマ等)を食草とし、卵も食草に産み付けられる。この有毒成分をたくみに体内に取り入れ自分を守る防御物質にかえて活用していると考えられる。
アメリカでアサギマダラと同科のオオカバマダラをヤブカケスに食べさせたところ12分後に激しい嘔吐を繰り返したといわれる。
122
123